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文とか絵とかのブログ。パロとか、けも耳とか色々遠慮なく上がります。
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こっそり連日更新とかしてみます(笑)
先日十色に忍では初めてサークル参加をさせて頂いたのですが、その原稿中にずっと書きたくて仕方なかった妖怪パロ鉢雷Ver.です^///^
一回で収まるかと思ったのですが、思ったより長くなってしまったので分けます!
次回で終わります。たぶん。
オチはとても分かりやすいかと思いますが、まぁそこはあえて目をつぶって頂けると...^^;
三郎がお狐です。そしていつもの通りに捏造激しいです^^;
もう私の書くものはそんなもんだと割り切って頂けると助かります;←
そんなのでも大丈夫よーという方はどうぞ読んでやってくださいませー^///^







「そろそろお前も嫁を迎える頃合いだと思うておるのだが」
その言葉に三郎は「はぁ」と気の抜けた一言を呟いた。

特別に大きくはないが、かといって小さくもない里に鎮座する鉢屋稲荷の本宮は、里の規模の割には実はそれなりに高位の神格を持った稲荷神で、その直系の眷属である三郎も生を受けた時点でそれなりの神格を持っていた。
三郎のその名が示す通り、上には二人の兄がおり、二人共に既に他社より嫁取りを終えている。
豊穣を司る稲荷神は、嫁取りを行なう事でその神通力が増す。
そうして自身の宮が与えられ、一人立ちが認められるのだ。
それ故に稲荷神の嫁取りは重要視され、兄達もそれにより一人立ちを終え本宮を出て今では鉢屋稲荷分社として別の地に稲荷社を構えていた。
兄達が嫁取りをした時期はちょうど今の三郎くらいの頃だった為、そろそろ来る頃かと思っていた三郎は、その話しをされても特にこれといった感慨もなくそれを受け入れた。

「それで、いつ頃に?」
「...嫌がらんのか?」
あっさりと認めた三郎のその返事に、話しを持ちかけた当の本人である父親は目を丸くした。
話しを振っておいて、嫌がらないのかとはどういう事だ。
「はあ、まあそろそろかなとは思ってましたから。で?どこのご息女で?」
嫁取りは他社との姻戚関係を結ぶ手っ取り早い方法でもある。
話しを持ちかけたからには相手も決まっての事なのだろうと思って聞いてみたのだが。
しかし目を向けた父は気まずそうに三郎から目を逸らして頭を掻く。
「いや、まあそれがな...」
口ごもる父の様子を訝しげに見つめ、先を促すと少し言いづらそうにしながら父は呟いた。
「お前の事だから、きっと交渉が難航すると思うておったのだ...。だからまだ相手は決めていない」
その言葉に三郎は軽く呆れたが。
しかし確かにいつもの三郎を知っている者であれば、嫁を取るなどという事をあっさり承諾するなどとは誰も思いはしないだろう。
周囲にはすっかり『変わり者』として通っていた三郎は、稲荷神としての務めやら付き合いやら、そう言ったものが煩わしくて仕方がなかった。
だから隙を見ては宮から抜け出し、下界へ降り、そのまま数日戻らないという事も少なくはなかった。
格だの何だのも正直興味はない。
格下のものから見れば腹の立つ事だろうとは思うが、それが自分の性分なのだから仕方がない。
そんなものよりも下界の様子を見ている方が余程面白い。
日頃からそんな態度を隠しもしていなかった為であろう。確かに嫌がられると思われても不思議はないかと思い直す。
「お前はどうなのだ?誰か心に決めた相手などはおらんのか?」
心変わりがせぬうちにという魂胆が丸見えな、急き立てるようなその問いに三郎は肩を軽く竦めてみせた。
「居るとお思いで?」
その言葉に父は頭を抱えた。
そんな父の様子を見ていたら、ピンとあるアイディアが浮かんだ。
その閃いた内容に、三郎は我ながら面白いとにやりと笑う。
「父上」
「...なんだ」
その笑みを見て嫌な予感がしたのだろう。眉を寄せて顔を上げた父に、にこりと爽やかに笑ってみせる。
「どうせ相手が決まっていないのならば、私が迎えたい相手を決めてよろしいですか?」
「誰だ?」
三郎がそんな風に笑った時は碌な事を言い出さない。父はそれを身を以て知っていた。
「人間の娘子をぜひ」
その言葉に父は再び頭を抱えた。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

雷蔵はまだ赤ん坊だった頃に、この里の長を務める不破家に拾われた。
聞いた話しによると、里の入り口近くの街道に布にくるまれ蓋を半分だけ閉めた葛の中に、雀の涙程の僅かな金子と『このこをおねがいします』と慣れないと一目で分かる拙い文字で書かれた文とともに置かれていたらしい。
たまたまそこを通りかかった不破家のご夫婦が、まだ言葉も話せない赤ん坊がと不憫に思い、連れ帰ってくれたそうだ。
雷蔵が貰われた当時はまだ赤ん坊だったので覚えては居ないが、物心ついた時には自分より年長の男の子が二人と、雷蔵より年少の女の子が一人居た。
しかしご夫婦はとても気持ちの優しい方達で、拾った子である雷蔵と実の三人の我が子とを分け隔てするような事も無く、まるで兄妹のように育ててくれた。
あの時にご夫婦に拾ってもらっていなかったら、きっと雷蔵はここにこうして生きては居なかっただろう。
野犬に食い殺されるか、例えばそれが免れていたとしても自らの意思で動けない赤ん坊はそこで飢えるより他にない。
どんなに返しても返し尽くせるものでは無い恩を惜しげも無く与えられてこれまで育ってきた。
どうにかしてそれに報いる事はできないものか。
日頃からそうして進んで使用人とともに立ち働いてきた雷蔵の耳に、ある出来事が舞い込んだ。

それは蒸し暑いある夏の夜の事であった。
「もし。どなたかおられませぬか」
玄関先で誰かが呼ぶ声が聞こえた。
声を聞いた限りでは品のいい女性の声のようであるが、今までこの里の中でその声を聞いた覚えが無かった。
決して小さいという訳ではないが、しかし大きい町とは違うその里は、日が落ちてしまえば道を照らす明かりは家々からこぼれる薄明かりと月明かりのみの暗がりとなる。
そんな中で緊急時以外に人が訪れる事などは稀な事で、声を聞いた瞬間に家人は皆顔を見合わせた。
玄関先でしばらく使用人が応対する声が聞こえていたが、しばらくするとどたどたと廊下を慌ただしく駆けてくる音を聞いて、やはり緊急事態であったのかと主人が腰を浮かせた。
「だ...旦那様...!」
夏であるため、部屋の戸は開け放っている。
その戸口から使用人が顔を見せ、手に持ったものを主人へと震える手で差し出した。
それはどうやら文のようであった。
「今...今鉢屋稲荷の使いの者というお人が来られてこれを...!三日後に返事を聞きにもう一度いらっしゃるとの事で...」
鉢屋稲荷の使い...?
その言葉にその場にいた全員が眉を寄せた。
鉢屋稲荷の宮には特別に宮司のような神職者は置いていない。なぜなら、代々宮の鎮守の役目を負っているのがこの不破家だからだ。
ならば使いとは一体...。
訝しげに眉を寄せたまま、主人はその文を開く。
一行一行読み進めるにつれ、その顔から血の気が失せていくのが見ていて分かった。
そして最後まで読み進めた時。
主人はその文を手から取り落とし、まるで何かに絶望したかの用に短く呻いて頭を抱えた。
その様子に家人が皆不安気な顔を見せ。
その時雷蔵は主人の手から落ちた文の一文を見た。

『この度当家第三眷属三郎に、御当家ご息女をお迎え致したく候』

それは鉢屋稲荷の御狐様からの婚姻の申込状であった。

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