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文とか絵とかのブログ。パロとか、けも耳とか色々遠慮なく上がります。
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ひとまずこれで終わりです!
終わりましたが...結局竹谷が竹谷じゃないままです...;
タイトルに笹豆腐って書いてあるの、完全に詐欺行為ですスミマセン...orz
今度続き書こうと思います...少なくとも、竹谷を竹谷にしてあげないとただのオリジナルになりますよね...;
これ、続きは「犬神と犬神憑きのバカップルほのぼのストーリー、時々シリアス」にしたいと思ってるって誰が信じるだろう...;
相変わらず、R15表記は暴力表現です。大丈夫!という方だけどうぞ^^;

そして読みたいと言ってくれた、友人M、S、あなた方のお陰でここまで書けました!
ありがとう!!vV

その後、父と母が庭の桜の木の下に兵助の姿を見つけた時には、全てが終わった後だった。
その桜の木は、兵助とハチのお気に入りの場所で、天気のいい日にはよく一緒にその木の下で日向ぼっこをしている姿を見かけたものだ。
その木の下で力なく座り込む兵助の姿を認めた二人は、ハチの身に何かが起こったのだろうと悟った。
まさか病気のせいで、とうとう...?
近づいてみれば、兵助の前には小さな土山ができていて、それをただ黙って見つめる顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
近くに寄っても兵助はこちらを振り返る事をせず、放心したように目の前の土山をただじっと見つめる。
そんな様子を見ていられないと声をかけようとした時だった。
兵助の前にある抜き身の刀に気がついた。
光源が月明かりと手に持つ灯りのみの暗闇の中、刀身にはぬらぬらとした黒い液体がついているのが見えた。

武士である父は、その液体の正体を識っている...。

ばっと振り向いた先の兵助のその姿に。
言い知れぬ怖気が立った。
黒く斑に汚れた、白い夜着。ぬめった液体を受けて汚れた顔。
ーまさか...!
力任せに兵助の腕を引き、汚れ乱れた夜着を剥ぎ取った父の目に飛び込んできたその光景は。

華奢な子供の体の左腰骨の辺り。
大きな犬が力任せに噛み付いたような傷ができていた。
今付いたかのようにじくじくと血を浮き上がらせるその傷は。
ハチのものにしては大きすぎて。
「....おまえは....」
そこで父は全てを悟り、兵助の肩を掴み絞り出すような声を上げた。
「お前は...なんという事をしてくれたのだ!!!」
腹からの怒声に兵助はびくりと体を激しく震わせた。
「家から犬神憑きを出したなど...お前は久々知の家を潰す気か...!!!」
そうして父親は兵助を地面に叩き付けた。
犬神憑きの体には、犬に噛まれた痕が付いているという。それはまさしく、犬神による所有の証...。
叩き付けられ蹲った兵助は、声も無く体を震わせ涙を流す。
父が怒るのは当然の事で、それでも兵助はその怒りを受けてなお、自分の行った事に対する後悔を持てないのだ。
蹲って泣く兵助に、感情に任せ更に手を挙げたその刹那。
ごうと何もかもを吹き飛ばすような強い風が一陣吹き過ぎた。
その強さに、その場に居た全員が目をかばい、また再び開いたそこには。
蹲る兵助を守るようにして立つハチの姿。
その場に居た皆が突然に現れたその姿に目を見張る。
挙げられた手に向かって低く唸るその姿を見て、父親は更に全てを悟った。
自分の子供は、もはや目の前に居るこの犬のものになったのだと...。
全身から発されるその殺気に、総毛立つ。
きっとこの犬は、兵助を害するものを全て容赦なく排斥しようとするだろう。
それは少し前まで主人だったものに対しても変わらない。今の主人は間違いなく兵助ただ一人。
犬神となった今、ハチであってハチでない、別のモノに成り果てた。
「...犬神は家に憑く...。そのようなものを置いておく訳にはいかぬ...!その犬とともに何処へなりと行け。これより先、久々知を名乗る事は許さぬ」
静かにそう告げ、父は踵を返した。
その絶縁宣言に、兵助はきつく顔を歪ませた。
しかし、追いすがる事は許されない。それだけの事をしてしまったのだ。
そして兵助は力なく立ち上がる。
生み育ててくれたその恩を仇で返すような事をしてしまったからには、もはやできるだけ早くこの家から離れる以外にできることなどない。
ふらふらと歩き始めたその時だった。
「待ちなさい」
父には付いて行かず、その場に残っていた母が兵助を呼び止めた。
「そのような血だらけの夜着姿でこの家から出る気ですか。それでは体裁が悪いでしょう。せめてその血は落として行きなさい」
無表情にそう告げ、母は母屋に向かって歩き出す。
はっきりと言われなかったが、付いてこいという事なのだろう。
ハチの方をちらりと見て歩き出すと、何も言わず後を付いてきたのでそのまま母について母屋へと向かった。
湯をはられた風呂へ入らされ、血で汚れた体を清める。
体の汚れを落として、よくよく自分の体を見てみれば、父が見咎めた左腰の噛み痕が確かにはっきりと付いていた。
しかし先ほどはまだ付いたばかりのように、じくじくと血を溢れさせていたその傷が、今見ればしっかりと塞がっていた。
ハチが犬神に成った事で、この噛み痕が安定したという事なのだろう...。
風呂から上がると、脱衣所には旅支度用の衣類が準備されていた。
身支度を整え玄関へと向かえば、そこには母と唯一未だ嫁に行っていない下の姉がおり、やはり旅支度用に整えられた荷物と、血を落とし清められた自分の刀を渡された。
刀は兵助が寺子屋に通うようになった頃に、父が与えてくれたものだ。先ほどの父の背中を思い出し、顔を上げた兵助に姉が小さく「父上から」と教えてくれた。
それから二人の手で荷を背に負わされて、順番に言葉も無く抱きしめられる。
最後に兵助の目を真っすぐに見た母は一言
「生きなさい」
それだけをはっきり告げて、兵助の背を押した。
玄関を出た所にハチは居て、兵助の姿を認めると軽やかな身のこなしで立ち上がる。
体の調子を崩してからここ最近、見られなかったその様子に兵助の目は喜びでじわりと潤む。
ハチとともに門を潜った所で振り返ると、玄関先でこちらを見る母と姉がおり、一度家を目に焼き付けるように見上げると、深々と頭を垂れた。
自分一人の我がままで、自分に関わる全ての人に兵助は後ろ足で砂をかけるような事をしでかした。
それでもこうして暖かさを与えてくれた存在に、兵助は心から感謝した。
その温もりから離れねばいけない事こそ、自らの愚行に対する罰なのだ。
そうして兵助は『家』と『家族』に背を向けた。
歩き出した兵助に付き従うように、隣にはハチが居る。
そうだ。ハチが居る。
何もかもを手にする事ができないのならば、ただ一つ、絶対に手放せないものが一つだけあればいい。
まだ夜が明けない闇の中、兵助はハチと並んで歩き出した。行き先など何一つ無いけれど。
兵助にとって、ハチが居れば、それでいい。

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