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三郎の過去ねつ造です。
ひとまずストック分はここまで〜w
後はちまちま忘れた頃に上がる...んじゃないかな...^^;

鉢屋三郎という子供は、十に満たぬその年齢の割に酷く子供らしからぬ子供である。
十に満たぬ男の子供と言えば、まさに腕白盛りで、母親の手を煩わせるのが仕事とばかりに野を駆け、じっとしている事などないのではないかというのが一般的であろう。
けれども彼は、その年に見合わぬ達観振りをみせる。

そして鉢屋と言えば、古より続く由緒ある忍びの家系である。
同じく忍びとして広く知られる、伊賀や甲賀、はたまた風魔。
それらの様な派手さは無いものの、鉢屋衆と言えばその道のものには変装術を得意とする忍び集団として知られていた。
その鉢屋衆を率いる当主の三男としてうまれた三郎は、通常ならば跡継ぎとなる長男を補佐するものとして教育を受けていたはずなのだが。
物心ついた頃には、特に意識するでもなく言う事、行なう事に周囲の大人が大げさなまでに驚き、喜んでみせた。
そしてそれが三郎の日常であった。
気づけば、父や周囲の大人達は、年長である兄達よりも事ある毎、三郎を引き立てるようになっていた。
そうすれば兄達も面白くはないのは当然の事で。
大人達の見ていない所で、兄達はちくちくと三郎を突いた。陰湿である。
けれども生まれつきのものであったのか、三郎はそのような状況に置かれて参ってしまう様な子供でもなく。
年を取る毎、三郎は冷静さを身につけた。

自分を伸ばす事に意識を向けず、いじけ当たる事しか能のない兄達と。
それに気付かず、上っ面だけ見て満足している大人達と。

実に人とは愚かで、面白い。

血に漏れず、変装術に才を発揮する三郎は、その型を真似れば相手の思考を読み取ることができた。
それが酷く、面白かった。

 ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・


ある晩、三郎は父の部屋に呼びつけられた。
行ってみると、自分の他には父しかおらず、今まで兄達と一緒に呼びつけられる様な事はあったが、一人で呼ばれる事など無かったため、一瞬面食らった。
示されるまま上座に座る父の前に腰を下ろすと、三郎の目をまっすぐに見つめた父は言った。
「春になったら、お前を忍術学園へ入学させようと思う」
聞けば、里の外には忍術を学ばせる学校があるという。
学園のある場所を聞かされたが、この里から出た事の無い三郎には聞いた所で、そこがどこなのかを理解できなかったため、すぐに忘れてしまった。
もうすでに入学の手続きは済んでいるという。父の中で、もはやその事は決まっている事なのだ。
それについては、今に始まった事ではないので特に問題もない。
兄達はそのような学校には通っておらず、三郎だけにその話しが来た事で、父の意図する所は明らかだ。
その事を考えると正直少々面倒くさかったが、鉢屋の束ねるこの閉鎖された鉢屋衆の里では学べるものも限られるし、外に出て色んな人間を見てみたい。
そして何より、兄達のつまらない嫌みを毎日聞かされずに済むのかと思うと、それはとても都合が良かった。
そうして、三郎は忍術学園へ通う事になった。

他の忍術はともかく、変装術に関して言えば三郎本人の興味もあったのであろうが、父や里の忍者達の見よう見まねで始めたその腕前は、大人でさえ騙される程のものであった。
実際、里では事ある毎に三郎は他者になりすまし、いたずらをしでかしていたが、あの全ての者が顔見知りである里の中において、三郎の変装を見破る者は今では限られる程になっていたのだった。
そしてそれも時と場合に限られた事であり。
故に三郎は自身の術に絶対の自信を持っていた。
初めて会う者に、自分の変装は見破られはしない。
学園の教師であるプロの忍者であれば、そんなこともあるだろうが。
同世代の子供にそれができるはずはないと。


「あれ?君もこの学園に入学するの?」
朗らかな性格をそのまま反映させたような、屈託の無い笑顔で声をかけられた。
学園へ来る道すがら、見かけた少年だった。その少年と茶店で行き会ったらしい親子連れの、子供の姿を取っていた。
振り向いたその先、視線を合わせた少年は。
三郎の目を見ると笑顔をおさめつぶやいた。

「君は...さっきの子とは違う子なの...?」

それが鉢屋三郎と不破雷蔵の出会いであった。

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