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文とか絵とかのブログ。パロとか、けも耳とか色々遠慮なく上がります。
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死ネタ、転生ネタ含みます。含むっていうかそのままです(笑
苦手な方はご注意ください。








はちが 死んだ



6年になって、実地授業という名の実践忍務が増えた。
一人で行くという事はまだそれほど無いが、これまでに行った忍務に比べて格段に危険度が増した。
周囲でも怪我を負って戻る者も増えたし、命を落とす者も実際居たのだ。

忍びを志す者として、それは当然ついて回るもので

だからその事実に悼みこそすれ、理不尽さなど感じる所ではなく。

しかし、それはあの夏の日に唐突に訪れた。



その日、ろ組で選抜された数人が忍務のため朝早く学園を出て行った。
その中には、鉢屋三郎、不破雷蔵、そして竹谷八左ヱ門、3人の名前も入っており。
忍務の内容を聞けば、それはかなり危険を伴う内容のようだった。
心配する久々知に対し大丈夫だと言い聞かせる3人に、必ず生きて戻れと。戻ってくれとその背を見送った。
こういう時に、つくづくなぜ自分だけが、い組であるのかという事がもどかしくてならない。
一緒に行けばせめて、何かあった時にはすぐに分かるし、助けにも行けるというのに...。

夜も更け、その日一日何も手につかなかった久々知は唐突に慌ただしくなった外の様子に気付き、胸騒ぎを覚えた。
慌てて部屋を出、騒ぎの場に駆けつけてみれば、そこには学園の教師陣と保健委員が総出で忍務から戻った面々をかなりの緊迫感を持って出迎えていた。

明らかに出て行った数よりも少なくなったその人数...

その中に、雷蔵の顔を見つけ久々知は駆け寄った。
近づいて濃くなった血臭に、ぐっと眉を寄せる。
「雷蔵!!」
呼ばれて顔を上げた雷蔵の様子に、久々知は更に表情を険しくさせた。
ほとんど意識を飛ばしかけているのか、ぐったりしたぼろぼろになった三郎を、三郎程でないにしろ同じく傷だらけの雷蔵が肩で支える。
駆けつけた保健委員に三郎を任せ、同じく促されたその手を断り雷蔵は久々知に向き合った。
「兵助。落ち着いて聞いて」
そのただならぬ様子に、久々知の心臓がどくんどくんと内側から胸を打ち付ける。
....そういえば、はちの姿が見えない...
そこに思い至った時だった
「はちが 死んだ」
そう言って、雷蔵は久々知に懐紙に包まれた何かを手渡した。
開いてみると、そこには一房の髪の毛。
触ってみれば、覚えのある狼の毛のような感触の...
竹谷の 髪

 ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・

そこで兵助はふっと目を覚ました。
いつもの寝慣れた体の下のベッドの感触、見慣れた天井。
視界が霞んで見えるのは、微かに顔が引きつるような感触で寝起きのためだけでなく、涙のためであったと気付く。

見慣れた夢...

それが自分の前世の記憶なのだと気付いたのはいつであったか...

竹谷が死んだと告げられたその日から、前世での兵助は笑えなくなったどころか、泣けさえもしなくなった。
雷蔵に告げられ、証のように一房の髪の毛を見せられたその瞬間。
ざっと全身の血が一気に体から抜き取られるかのような気持ち悪い感覚を覚えた。
それと同時に、まるであらゆる感情までもが流れて落ちてしまったかのように、前世の兵助は表立った感情をほとんど出さなくなった。
ただ一つ。
時折唐突に。それは何かの発作のように。
怒りとも虚しさともとれない、激しい破壊衝動に駆られる事があったが、ただそれだけ。
忍務に出ては無謀な程の行動をとるようになった久々知に、三郎は一言「死のうとしているように見える」と漏らしたことがあった。
その時には何を馬鹿な事をと一蹴したのだが、今考えてみればその通りだったと思う。

前世で命を落としたその時
忍務中に敵方の忍びに刺され、血が抜けて行く感覚を味わいながら感じたその感情は
恐怖ではなく、幸福感
これで竹谷の元にいけると...

しかし結局、生まれ変わっても兵助はこうして一人で居るのだ...
そうしてあの時の夢を見続ける。
相変わらず兵助は笑いも泣けもしないまま、唯一泣けるのは寝ている間の無意識下の中でのみ...。


ーふぅ...
前世の自分に沈みかけた意識に気付き、深くため息をつく事で無理矢理気持ちを切り替える。
今日から無事合格を果たした高校に通うのだ。入学初日から遅刻する訳にはいかない。
気分は乗らなかったが、兵助は真新しい制服にゆっくりとした動作で袖を通した。


長ったらしい校長の形式張った話しを聞き終え、出席簿順の自分の席を確認し座った所で担任が入ってくる。
担任は自分の紹介を終え、これもやはり新年度の常でクラス全員の自己紹介に移る。
名前と適当な自己紹介を終えて行くクラスメイト達の例に漏れず、同じく適当に自己紹介を済ませた兵助の数人あとに。
思いがけないその出来事。
「竹谷八左ヱ門。○○中出身。趣味は動物を育てる事っす」
聞き覚えのある、その名前、その声。
勢いを付けて振り返った先には
髪は短くなっていたものの、あの時のままの竹谷が居た

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